「ごめんなさい…」

萎んだ声も聞こえたかどうか。

俯いて縮こまった葵を見て、人の良い委員長は笑った。

「気合十分ですね。歌詞係は…他にやりたい方もいないようなので、宜しくお願いします」
「え、…ほんとですか」

聞こえた声に耳を疑う。
頷いた委員長に、「ありがとうございます」と慌てて言うが、内心では半信半疑だった。

いいの?これ。
戸惑いながら席に座ると、小夜が親指を立てているのが見えて、やっとほっとして息をつく。

(言えたんだ、私)
それはほんのささやかな成功で、成功とも呼べないようなものだったが、自分だけは自分の決意を知っていた。

葵は頬を緩ませると、家に帰るまで良い気分だった。
しかし、制服から着替え、ベッドに顔をうずめた瞬間はっとした。