と、とりあえず、今この事は考えないでおこう。

後で真吹さんに聞けば分かるかもしれないし。

今日から始まる私のお仕事は、学校での時流様の護衛だ。

お金持ちの息子だから、時流様は昔から誘拐されそうになった事があるらしい。

これは、私が全身全霊でお守りしなくては!


「おーい、市木ー?どこ行った?クラスメイト達にお前の事紹介するから、来てくれよー!」


時流様の呼ぶ声がする。

はっ、こんな所で一人反省会してる場合じゃない!

早く一人前のボディーガードとして、使用人として、仕事を全うしなくちゃ!

……でも。

もう、呼んでくれないのかな。

私はただの使用人だし、蝶野さんや真吹さんと同じで、下の名前は呼んでもらえないのかな。

い、いやいや、私は時流様に雇われてる身!

時流様に選んでもらえなかったら、児童養護施設でずっと空っぽのお人形状態だったんだから!

今こうやって綺麗な服を着られて、美味しいものも食べられてるだけ、幸せだと思わなきゃ!

私みたいな底辺の人間がこれ以上望むなんて、贅沢がすぎる!