早めにカフェについた茅野は、紅茶を頼んだが。

 食事が食べられなくなってはいけないので、あまり飲まないようにしながら、ぼんやりガラス越しに外を見ていた。

 不思議なもんだな、と思う。

 あの日、思いあまって此処に来て、秀行さんに離婚を切り出さなければ、きっと、穂積さんとは出会っていない。

 今も、あのまま、ずるずると望まぬ結婚生活を続けていたことだろう。

 ああいうの、秀行さん的にもよくなかったと思うんだけど、どうなんだろうなあ。

 そんなことを考えながら、穂積と出会ったエレベーターの方を振り返ったとき、淡い色の、仕立てのいいスーツを着こなした、美しい青年がこちらに向かい、駆けてくるのが見えた。

「茅野ちゃん」

「あっ、玲さんっ。
 こんばんは」
と微笑むと、

「待たせちゃって、ごめんね。
 またお客さん来ちゃって、お兄ちゃん、すぐに出られなくなったんだよ。

 予約までに間に合わなかったら、僕が一緒に行けって」
と言ってくる。

「えっ? そうなんですか?」