今回はそれに加え、蘇った記憶は記録じゃない。思い出すことが必然として決まっていたとしても、私は万全の準備はできていなかったということ。そんな甘い考えで、動いていたということ……。



「私なんかがいきてたから、ユキナさんが、ファライア様が…。」



どんどん自虐の渦に飲まれる中、それは突然は消えた。



「言ったはずだ。どんなフィーちゃんでも、俺は変わらず隣にいると。」



フワリ、彼の胸中に私はいた。



「例え学生じゃなくなっても、過去に何があっても、第二王女だとしても。」



優しい言葉と、大丈夫と言わんばかりに抱きしめられている腕。彼のそれらに、私は溢れる涙を止めることはできなかった。



「私は、誰かの犠牲の上でしか生きていない。

その人たちは、その時私がいなかったら今も生きて、沢山の人を幸せにできたはずなのに……。」



カツッカツッと、ヒールを鳴らす音が聞こえた。鳴らしながらこちらへ来て、正装の服が汚れることも気にせずしゃがみこんだのは、紛れも無いお姉様(ファレリア様)だった。



「お母様が願った中に、あなたが幸せになる日まで記憶を消すというものがありました。つまり、幸せになっていないと記憶が戻るはずはありません。

然し乍ら、あなたの記憶は戻った。つまり、お母様が望んだ、いえ、それ以上の幸せに触れられたのです。

あの記憶を思い出した妹(あなた)なら、そんなことくらいわかるでしょう。」