「着いたら、まずは服と髪のスタイリングだな……俺は異性の事はよく分からん。真吹、お前に任せる」

「えー?私そんなに美容とかファッションに詳しくないですよぉ〜」

「化粧くらいなら出来るだろ。使用人である以前に、こいつは初めて俺の家に来る客人でもある。慣れさせるために丁重に持て成すのが普通じゃないのか?」


……そんなの、いらないのに。

私は田園風景が広がる窓の外に目を向ける。

化粧なんて半日経てば落とすし、服だって身体が成長すればすぐ着られなくなる。

髪もちょっと動かせばボサボサになるし。

ずーっとそのままでいられるものなんて無いんだから、何もしない方が良いのにな。

でも、きっと首を縦に振らないと、ガッカリさせちゃう。


「嫌なら嫌と言えよ?無理強いはしたくないからな。お前を楽しませようとしてるのに、逆に不愉快な思いをさせるなら、やらないからな」


時流様は私に優しいお言葉をくれた。

嫌……ではない。

ただ、その楽しい時間が終わってしまうのが寂しい……のかも。