「何ぼぉーっとしてるの、ゲキ?」



その馬車は目的の場所であるヴィーナス王国王宮の、月詠の門についていた。けどゲキは寝ていたのか、あるいは遠くを見ていたのか、とにかくこっちに意識がなかったであろうそれを引き戻した。



今回のメインは私だから、先に馬車から降りると、案内役をかってでてくれた学園での先輩の元へ歩いた。



「久しぶりですね、カイラさん。」



作法は間違ってないはず。緊張はしているものの、それで怯んでいてはあの方に合わせる顔がない。



「お久しぶりですカイラさん。

本日はよろしくお願いします。」



ゲキは、アレクシア侯爵家長男ということもあってさすがと言えるものだった。



「中でファレリア様がお待ちです。

では、ご案内します。フィーネ・アレクシア様。」



あの方の側近のカイラさんも、アオレル公爵家の後継ということもあってさすがだった。



警備が一番厳しい月詠の門は、警備の目という名の視線を痛いほど感じたけど、よく考えなくてもウェルティフル学園卒業から約二週間が経とうとしている今日まで、たくさんのことがあった。