「帰るわよ」


お母さんはあたしの手を掴むと無理やり歩き出した。


「待ってお母さん! 翔太と美津がまだ見つかってないの!」


あたしは必死で抵抗してそう言った。


お母さんは痛いほどあたしの手首を掴んでいて、その手を離す気はなさそうだ。


「梢!」


渉が慌てて追いかけて来るのが見えた。


その姿にお母さんが立ち止まる。


「渉君……」


「梢のお母さん、俺が一緒にいながらこんな事になってしまって、すみません」


渉はそう言い、深く頭を下げたのだ。


「渉、渉は悪くない」


「いや、俺がもっとしっかりしてればこんな事にはならなかったかもしれないのに」


渉はあたしの言葉を遮るようにそう言った。


お母さんは視線を彷徨わせたあと、掴んでいたあたしの手を静かに離した。