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「おい、これ見ろよ!」


それは12年前の記事を探していた時だった。


突然渉の大きな声が図書館内に響き渡り、あたしはビクリと体を跳ねさせた。


「わ、悪い」


渉は周囲を気にしながら新聞を持って近づいてきた。


「なにかわかったの?」


「この記事、見て見ろよ」


それは地元で起こった行方不明事件だった。


12年前の正午頃、3歳の男の子が行方不明になった。


男の子は直前まで友人たちと公園で遊んでいて、突如として姿が見えなくなったらしい。


当時現場付近に子供たち以外のひと気はなく、目撃者もいなかった。


新聞には男の子の顔写真と名前も載っていた。


その名前に悲鳴を上げそうになり、慌てて両手で口を覆った。


《松田彰君3歳》


新聞にはそう書かれ、3歳の幼い彰の写真が載っていたのだから……。