「平和?」
 
涼は一樹をじっと見た。

時折吹く冷たい風が、躰を震わす。

季節は冬になろうとしていた。

もうすぐこの場所で昼休みを過ごすこともなくなる。そしてそのまま、卒業だ。

高校生活の、休み時間のほとんどを屋上で過ごしてきた二人にとって、今年の冬は、寒いから教室で食べようか、と、簡単に引っ込むわけにはいかなかった。

一度室内で食べると、もう屋上で昼ご飯を食べることはなくなってしまうかもしれない、という漠然とした不安が胸の内にあった。

二人が卒業したあとも屋上は在り続け、他の生徒が二人の居た場所に腰かけ、ご飯を食べたり話をしたりするのを想像すると、当たり前のことだと判っていても嫌だった。

存在していた筈の自分を、消されてしまうようで怖かったのだ。