俺には超えられないと思っている人が2人いる。


『天敵』とも呼べる存在。



1人は、めちゃくちゃ厳しい俺の親父で。



そして、もう1人は――



「良ちゃんおそーい! どんだけ待たせるの?」


「いちいちうるせーな。……先行ってればいーべ?」


「へぇ? あたしが先に行くと機嫌悪くなるくせに」



とさか化した寝ぐせを手で押さえつけていると、


そいつはふわりとスカートを風になびかせ、俺を見つめてきた。



「べ、べつにお前なんかどーでもいーし」


「なにそれ……そんなこと言われたら悲しいよ……」



ふりふりしたブラウスにふわふわしたスカート。


ピンク色のランドセルに、つやつやした黒くて長い髪。



そんでもって、俺のすぐ前で瞳をうるうるさせている。



目を合わせると、ぐっと喉が詰まる感覚がした。



あーくそめんどくせー!!!