あたしはモヤから視線をそらすことができずにいた。


この目。


この口。


見れば見るほどどこかで見たことがあるような顔なのだ。


だけど、どこで見たのか思い出せない。


どんな顔だったのかも思い出せない。


まるで記憶にモヤがかかっているようだ。


どうしても思い出したくてモヤを見つめる目に力を込めた。


その時だった。


急激なメマイを感じてあたしは目を閉じた。


座っているのに体がふらつき、そのまま横倒しに倒れてしまった。


「梢!?」


あたしが倒れたことで呪縛が解かれたかのように、みんなの時間が動き出す。


「梢、大丈夫か!?」


渉の声がどこか遠くで聞こえて来て、あたしの視界は真っ暗になったのだった。