渉は出された部屋着を手に取ってしげしげと眺めている。


男子たちには准一のお父さんの服が、女子たちには准一のお母さんの服が用意されていた。


「でもさぁ、こんなのまで出されてさぁ」


と、翔太は准一のお父さんの服をつまみ上げる。


まるで汚い物を扱うようなその仕草にあたしは「やめなよ」と、制した。


「通夜ってそんなもんだろ。亡くなった人の周りに集まって、亡くなった人の思い出話をする。俺のじいちゃんの時も似たようなもんだった」


その言葉にあたしは驚いて渉を見た。


「渉の御爺ちゃんって亡くなってたの?」


小学生の頃、渉の家に遊びに行くと、畳のリビングにはいつもおじいちゃんがいた。


冬はコタツに入って、夏は扇風機の前で、シワシワになった手でタバコをふかしていたのを今でもよく覚えている。


「あぁ。中学に上がってすぐだったかな」


「嘘……知らなかった」