それは朝5時頃の事だった。


あたしはまだ眠りの中で、寝覚めるには到底早い時間だった。


両親だってまだ起きていなかっただろう。


そんな静かな眠りを妨げるように、家の電話が鳴り始めた。


リビングで鳴り響く電話に出たのはお父さんだった。


話し声はあたしの部屋までは聞こえて来ない。


あたしは再びまどろみはじめ、目を閉じた。


すぐにでも夢の世界に入って行けそうだったのに、ドタドタと足音が聞こえて来てあたしの眠りはまた妨げられた。


そして乱暴に叩かれたドア。


「梢、起きろ!」


お父さんの声がして、乱暴に開かれたドアにあたしは上半身を起こした。


「なに?」


寝起きの声でそう訊ねるとお父さんは電話の子機を握りしめたまま、眉間にシワを寄せた。