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あたしの家に電話が来たのは夕飯を終えたころだった。


それは和夫のお母さんからの電話で、あたしの胸には嫌な予感が一気に広がって行く。


和夫の真っ青な顔が脳裏に焼き付いていて離れない。


「もしもし」


あたしは震える声を振り絞って受話器を握りしめた。


「梢ちゃん? こんな遅くにごめんなさいね」


和夫のお母さんの声はやけに遠くに聞こえて来た。


「いいえ。あの、和夫は……?」


「今ね、病院なの」


その言葉にあたしは声が遠い理由がわかった。


周りに気を使って小さな声で話をしているのだろう。


「和夫は、大丈夫なんですか?」


「和夫は……和夫はね……」


和夫のお母さんの声がブルブルと震えた。


感情を押し殺しているのに、自分では抑えきれない感情がせりあがってきているような声。


「今……たった今……!」


さっきまで小さかった声が悲鳴に変わった。


それ以降、和夫のお母さんはまともな言葉を紡ぐこともできず、叫び声を上げ続けた。


それだけであたしは和夫の身になにがあったのか理解してしまった。


あたしは叫び続ける声を無視して電話を切ると、自分のスマホで渉に連絡を入れたのだった。