しばらくすると、絵里子さんが眠そうに隣の美樹さんの肩にもたれかかるようになった。

「絵里ちゃん、旦那呼ぶから帰ろうか」
「うーん、ごめん。昨日遅かったから眠くなっちゃって」
目をこすってあくびを我慢している様子。

美樹さんが形態を取りだし手早く携帯を操作している。

「俺が送りましょうか?」
思い切って言ってみるが、美樹さんが財布から数枚お札を取りだし柴田に渡しながら言う。

「ありがとう。でもダンナが迎えに来るから大丈夫よ。
今日は絵里ちゃん、うちに泊まるから。みんなはまだゆっくり飲んでてね。
あと、柴田さん、会計よろしく。これ、私と絵里ちゃんの分。多かったら次回に回して足りなかったら、後は柴田さんのおごりで」あははっと笑う。

「美樹さん、ひどいな」
柴田も笑っている。

俺たちの会話が聞こえたまいちゃんの同期らしい子が
「えー!ダンナさんのお迎えですか!」
興奮して大声を出した。

「どっちのダンナさんですか?!イケメンで有名な絵里子さんのダンナさんか年下のイケメンの美樹さんのダンナさんか?」
きゃー、会いたいですぅと甘えた声で騒ぎ出す。

絵里子さんのご主人ってイケメンで有名なんだ。
そりゃそうか。絵里子さんがかなり綺麗だけど息子もかなりイケメンだ。祐也は美男美女の遺伝子なんだな。

絵里子さんは既婚者で母親ってわかっていたけど胸がずきりと痛む。

そうか、ご主人やっぱりイケメンなんだ。

俺の気分が沈んでいくのに向こうでは女の子達がきゃーきゃーと騒いでいた。

「お迎えに来たら挨拶しますぅ」なんて言ってる子に向かって美樹さんが呆れた様子で爆弾を落とした。

「は?どっちのダンナって私のに決まってるでしょ。絵里ちゃんはとっくに離婚してダンナなんていないし。フリーよ、フリー!」

え!

あっけにとられるみんなを無視して、もう寝かかっている絵里子さんを揺り起こし上着を着るように言うと、
「じゃ、もう外にダンナが来てるから」
絵里子さんの腕を引っ張ってさっさと帰って行った。