「私もしかしたら…松村さんのことが…」


「やめろ、それ以上言うな」


言ってしまいそうだった言葉をぐっと奥にしまい込む。


「松村さん…」


「俺は別にお前に対して特別な感情は抱いてない。応えてやれないから、だからもう言うな」


ハッキリと告げられた。


じゃあ私は松村さんにとって、一体何だったのだろう。どのような立ち位置にも属していない気がする。


「どうして私に良くしてくれたんですか?突然現れた変な女です。それなのに、どうして…」


だんだんと目の奥が熱くなってくるのがわかる。ダメだ、泣いたらダメだ。


必死に堪え、それでも目線は松村さんから外さなかった。



何故か苦しそうな表情の松村さん。彼が今何を考えているのか、私にはわからない。



「…ごめん」



しかし、松村さんの口から真実が語られることはなかった。松村さんの後ろ姿が見えなくなっていく。


大高原にぽつんと佇む私。この大樹と同じように。だけど、自立する大樹よりも確実に存在感はない。


本当に、ちっぽけな人間だ…私って。






この日を境に、松村さんに連絡することも、この場所に来ることもなくなった。