俺とひのが付き合っていたとき。

まわりからは別れないと言われていたものの、俺らにそれほどの信頼関係はなかった気もする。……安定感は、そこそこあったはずだけどな。



「ひのが使いやすい方でいい」



「うーん、スマホケースにはストラップつけられないし、バッグには地元の子とお揃いのついてるし……

アクセサリーの方が使いやすい、かな」



「ん。なら適当に店探すか」



こくりとうなずいたひのと、店を探すついでにショッピングモールを軽く散策する。

その間に交わすのは、他愛もない話ばかりで。……あの頃のように甘さを孕んだ会話がない分、昔との距離を感じる。



「あ、あのお店ならたくさんあるんじゃない?

カップルもたくさんいるみたいだし、」



つっ、と、やわらかく俺の袖を引くひの。

顔を上げた彼女が思い出したように袖を離したから、おそらく無意識だったんだろう。変に意識されんのも気が引けて、「何にするか決めたか?」と気づかなかったみたいに話の続きを促した。




「え、っと。

わたしブレスレットつけないしピアスホールも開けてないんだけど、」



「つけやすいのはネックレスとかだろうな」



言った瞬間、ひのが困ったような顔をする。

……そんな顔するってわかってて、あえて口にした。困らせたいわけじゃないのに困らせてみたくなるこの矛盾した感情は、俺にもどうしようもない。



「冗談だよ」



「、」



「今つけてるの、彼氏からもらったんだろ」



何気なく、知らないうちに目にしていたオープンハートのネックレス。

彼氏がいることを知らなかった間にはおしゃれでつけてるものだと思い込んでたが、この間、ひのの彼氏に直接会った時にペアだと気がついた。