「逢坂さん、ありがとうございます。お気持ちだけ受け取っておきます」

「そうか」


そして逢坂 湊は私の目を見て笑った。

口元が優しく弧を描く。

彼の瞳の中に夜空の星がキラキラと瞬いた。


私たちを包むように蒸し暑さを残す風が吹く。


私はその笑顔に、金縛りのように動けなくなって、しばらくの間時が止まったように感じた。


笑顔、初めて見た。



「どうした?」


目を見開いて固まる私を、きょとんと不思議そうにする逢坂 湊。

その姿までもがとても様になっている。


「…え、あ、なんでもないです」


私は何故かとてつもなく驚いて、どうしようもなく驚いて。

あれ?これってなんて言うんだっけ。



───今の私にはまだ思い出せない。