きみと泳ぐ、夏色の明日

笑い方もしゃべり方も須賀とは非対称。


「恭平は本当にストイックの塊だからね。あんなに自分を追い込んで練習する人は恭平以外に見たことないよ」

「……須賀とは仲よしなの？」

「俺は友達だと思ってるけどね」

「……ライバル？」

「うーん。ライバルじゃないよ。俺のライバルは自分だもん」


それは１位の余裕なのか、それとも須賀のことなんてライバルにするほどでもないってことなのか。

スポーツはメンタルがすべててって言われるけど、強気じゃないと、きっと大会の雰囲気だけで飲まれてしまうから。


「すずちゃんって彼氏いるの？」

須賀の話をしていたはずなのに、突然話題は別の方向へ。

……やっぱり圭吾くんって読めない人だな。


「……いない、けど」

「そうなの。可愛いからいると思った」


昨日の放課後も思ったけど、女子の扱いに慣れてる感じだ。こうすれば喜ぶとかこう言えば笑ってくれるとか。

これを無意識にやっているとしたら、逆に怖いっていうかモテる自覚がなさすぎる。


「恭平は今いるのかな？」

「え？須賀もいないと思う……ってかアイツが恋愛なんて想像できないし」


須賀って恋愛という部分では一番結び付かない人かも。だって本当に寝てる以外は水の中にいるようなヤツだし。


「でも恭平、中学の時はずっと彼女いたよ？」

「え？」

「そんなに驚く？恭平モテるから普通でしょ？」


なんかすごい〝須賀じゃない〟一面を知ってしまったというか、恋愛のれの字もない人だと思ってたから。


「水泳の練習ってハードだし大会前はナーバスになりやすいから、うまく時間見つけて恋愛で息抜きしてる人はたくさんいるよ」

「………」

「まあ、結局水泳優先になっちゃうからそれを理解してくれる子ってなかなかいないんだけどね」

そんな話をしながら圭吾くんとは駅に着く前に別れた。