「もう、帰ろう。琴音」



彼の発した言葉に頷きゆっくりベンチから腰を上げて、歩き出す。



その間も、雨は穏やかに降り続いていた。



傘をさす意味もないくらい私達はビジョビジョになっていた。



服や髪は水分を吸って重くなって歩きづらかった。



ゆっくり歩いても二人の間に会話なんてなくて



ただ離れてしまわないように、壊れてしまわないように手が強く握られていた。