あの館...というのは、この辺りでよく噂になっている館のことだ。


その館は昔、裕福な家族が住んでいたらしいが、ある日その財産を狙った強盗が入り、その家族は皆殺し...。

それ以来、あの館には不気味な噂が後を絶たないのだ。


あの館の中で奇妙な人影を見たとか、面白半分で肝試し気分で入った中学生の行方が不明になったとか、他にもいろいろだ。


そんな館に、あの南形さんが行ったなんて...信じられない話だった。


「ね、それってマジ?」


話していた女の子三人に、ある生徒が話しかける。

鷹見希夏(タカミノノカ)...クラスの女子の中で一番の権力を持ってる子だ。


「う、うん...。

部活の先輩が行ってたから、間違いないと思う...」

「あ、あたしも、隣のクラスの子から聞いた...」


それまでやかましくお喋りしていた女の子達が、急に大人しくなる。