…日本語、通じないのかな。

かと言って、英語やフランス語なんてもっと通じないんだろうな。


私はふふふ、と皮肉に笑って、彼女に掴まれた腕をやんわりと振り払い歩き出した。


「私、香川 佳穂《カガワ カホ》って言うの!
よろしくね!高野 結愛ちゃん!」


背後から叫ぶ彼女を完璧に無視して歩き続ける。

うるさいなあ。友達にならないって言ってるのに。

名前だって言われても覚えないっての。


私の名前を知られていたのは少し予想外だったけれど。


その後、いつも通り図書館に向かった私は知らなかった。





───まさか彼女との出会いが私の今後を左右するなんて。