本当は、ヒーローも恩人も、たまらなく嫌だ。

あの写真が好きなら、どうしてそのとき、写真を撮ったわたしのことを好きになってくれなかったんだろうって、汚いことも普通に思う。

どうしてわたしは〝ヒーローで恩人〟で、実結先輩が〝人を好きになることを初めて教えてくれた人〟なの。


「実結先輩は先生が好きなんだよ。百井くんを好きな人なら、ここにいるよ……」


無理な恋はしたくなかったのに。

ちゃんと前向きな気持ちで終われた素敵な失恋にしたつもりだったのに。





――恋は理屈じゃないと初めて知ったこの日の夜、わたしは、失恋してから初めて本気で泣いた。