物怖じせず、思ったことは面と向かって言える私達。

いつもはそれが、とても心地いい。


だけど、そうでないことも稀にある。




「……お前、どしたの」


肩で息をする私に、康介は怪訝そうに眉根を寄せる。

実際は大した声量じゃないはずなのに、それは私達以外に誰もいないグランドにとてもよく響いた気がした。


「…………」

「こんなに差開いたこと、今まで一度もなかったろ」


何も答えない私に構わず、康介は言葉を続ける。


「最近調子上がんねーって言ってたけど、なんか関係あんの」


遠慮のカケラもない康介の言葉が、痛いところにグサリと突き刺さる。


学校に着いてからそれぞれに更衣を済ませ、私達は一緒にアップを始めた。

競技は違えど、先に身体を温めなければならないのは同じ。

ストレッチ、ジョギングと済ませた後、一緒に練習する時は恒例となっている50メートルダッシュをしたのだ。

何本も一緒に走ってきたけど、いつも僅差で負けてしまう。

他の人からすれば、短距離専門の選手がそれはどうなのって感じかもしれないけど、康介の運動能力はピカイチで、多分そのまま陸部に入ってもやっていけると思う。


そんな彼に、今日はかなりの差をつけられた。

康介の足が急に速くなったとか、そんな他の理由じゃないことは、走った私が一番よくわかっている。