「行こう」


青くんの声に、私たちは立ち上がった。


「由鶴、私、がんばった?」

「がんばったよ」


紅未子の愛らしい顔が、嬉しそうに、恥ずかしそうに、くしゃっと笑う。先を行く紅未子のスカートが揺れ、しなやかな長い脚が覗く。

憂鬱なことがひとつ消えて気分がいいんだろう、誰も使わないため電球も外されて薄暗い階段を、弾むように降りていく。案の定、段数を見当違いしたのか、最後の段で足を滑らせた紅未子を、少し前を行っていた青くんが慌てて抱き留めた。


「調子に乗るな」


叱られて肩を落とす背中を叩いて慰めてあげると、紅未子は情けない顔で、それでも健気に微笑んだ。

紅未子が私を呼ぶ時、私はどこか甘く、くすぐったく、誇らしいような愛おしいような気持ちに襲われる。

だけどそれだけじゃない。


——しっかりしろ!


なによりも、そう言いたくなるのだ。