元々好きで結婚した相手ではないのだ。


遺産についての話をさっそくしていたお父さんを思い出すと、心配の必要はなかった。


「まぁ、あの人はそうよね」


お母さんは冷たい声でそう言い、コーヒーをひと口飲んだ。


「芽衣、なにかあればすぐにお母さんに言いなさいね? お母さんはいつでも芽衣の味方なんだから」


「うん。ありがとう、お母さん」


そう答えながら、あたしは『自殺カタログ』の存在を思い出していた。


あれは本物だった。


あれさえあれば、あたしを悩ませている人間を全員この世から消す事ができる……。


だから、きっと大丈夫だよ、お母さん。


あたしは心の中でそう言ったのだった。