どうにもゆとりちゃん達にはやっぱりわからないものがあるみたい。

タイルだの瓦だの…と、一番コストダウンしにくい資材なのに。


「すみません、ちょっと席を離れます!」


ぎゅっとスマホを握りしめて部署を飛び出した。
休憩室の隅に隠れ、胸のポケットから名刺入れを取り出す。

そこから一枚の名刺を見つけて、トントン…とある場所の電話番号をタップする。



「……はい、一ノ瀬です」

「どういう意味よ!あれ」


藪から棒に話しだした。
名乗らなくても、彼には私だと直ぐに察しが付いたらしい。



「メール届いたんだ」


やけに嬉しそうな声を出す。


「どう?気に入っただろう」


そこは、どうして疑問形の聞き方じゃないの!?


「気に入るとか入らないとかの問題じゃなくて、どうして私の話した家がモデルハウスになるの!?」


「別にいいじゃないか。いろんな人の意見を聞いてみて、大田の言ってた家が一番具体性があったんだよ」


平然としてる一ノ瀬圭太の顔が浮かんできて、私は思わず声を張り上げた。


「私が話した家よりも高コストな感じよ!」


誰もタイルの大きさや瓦の種類まで指定してない。


「それをコストダウンするのが、資材部管理課の仕事だろう?」


心配しなくても外壁のタイルもオプション素材の一つだと言った。