住宅販売の仕事に就いて良かったなと思う。
自分自身の夢が形になる可能性が、僅かながらでも広がったという意味だから。


私が話してる間、正面にいた男は小さく笑う以外は微笑んでた。

つい気を許してあれこれ喋ってしまったけど、あれが全部形になるとは思ってない。


いろんな人の意見を聞くと言ってた。

そして、彼にとって最良と思われる家のデザインが作られていくんだろう。



(私達はその資材を責任持って調達するだけ)


人材育成よりも資材の管理と調達。

私は自分の中で挑戦を何処か諦めてる感がある。

自分には人を成長させるだけの器はないと思う。
気持ちに働きかけて、ヤル気を起こさせるなんてムリ。


(だから自分が頑張らないと。私だけが頑張ればいいんだから)


それが終わらない挑戦。
スタートしか無くて、ゴールは見えない……。



(ゴールは…見えない……)



ゾッ…とする様な恐怖心が走った。

弱さが顔を出さないように、必死で仕事を始めたーーー。