皆が出て行ってしまった教室に、私の声が静かに響いた。


友香ちゃんは動きを止めて、まっすぐに私を見つめてくる。




「矢代くんがもう来ない?」

 
「そんなわけないよね。でも、なんか‥‥」

「それって、転校でもしちゃったってこと?」



──転校。


ドク、と心臓が冷たく鳴る。



" 聞かないで "

" また、いつかね "

" 今日だけだから "




昨日、瑞季くんと別れてから、いやに頭から離れなかった言葉。


何か秘密があるかのような、まるでもう会えないかのような、

そんな口ぶりに聞こえてしまったから。




「……そうだったらどうしよう」



急に、胸が締め付けられたみたいに苦しくなった。

どうしようもなく痛い。



「大丈夫だって。先生も今朝、矢代くんのこと何も言わなかったし」


「うん……」