私がようやくトイレの個室から出ていくと。



「ちょっと美月、いたの?」



私がいたことに今気付いた愛美は、一瞬だけバツの悪い顔をしたけれど、すぐにいつもの愛美に戻る。



「どうせ、ザマーとか思ってんでしょ?」


「べつに?自業自得だと思ってるだけ」



愛美の横を通りすぎ、手を洗いながら答える私。



「しかたないじゃない。欲しいものを手に入れるためには、時には何かを犠牲にしなきゃいけないこともあるのっ」


「……そこまでするくらい、大地のことが好きなの?」



出会って間もないのに、大地のことなんてたいして何も知らないくせに。



「……好きだよ。だから、大地くんはどんな手を使ってでも絶対にあたしのモノにしてみせる。美月になんか渡さないんだから」


「……っ」



……何それ。


私だって、愛美なんかに渡したくないよ。


大地だけは、絶対に──。


だって、私も。


大地のことが好きだから……──。