自分の変化に愕然としながら、青磁と肩を並べて歩く。


「お。雨、やんだな」


青磁が傘を少し傾け、掌を空へ向けて手を伸ばした。


「……うん、やんだね」


私も同じように空へ手を差しのべる。


雨のにおいがした。

雨に濡れたアスファルトのにおいと、雨が集めた空気中の埃のにおい。


「雨上がりの街ってさ、めちゃくちゃ綺麗だと思わん?」


青磁がうきうきしたように笑って私を見た。

その顔を直視できなくて、ぱっと目を逸らし、彼の言葉に従って世界を見つめる。


青みがかった灰色の厚い雨雲が切れて、ところどころから幾筋もの光が洩れ射し、その部分の雲は真っ白に輝いていた。

雨に濡れた路面がきらきらと光を反射する。

水溜まりには、晴れ間が覗く空が綺麗に映っていた。

街路樹の濃い緑の葉の先に、透明の雨の滴が鈴なりになっている。

住宅街の家々も、雨に洗われて浄化されたように清らかに見えた。


そして、それらのものたちを包み込むように、青磁の描いた虹が私の頭上には広がっている。


青磁の隣で見る世界は、いつだってきらきら光り輝いていて、目を瞠るほどに美しい。


薄暗い灰色の世界に沈み込んでいた私を、彼が、この美しい世界に引き上げてくれた。


青磁が私の世界を変えてくれた。


もう雨はやんだけれど、青磁は傘を差したまま歩く。

私もなにも言わずに傘に包まれたまま歩く。


この時間が永遠に続けばいいのに、と思った。

それくらい美しい時間だった。