「手紙……?」


「え?わ」


いきなり万里に後ろから手元を覗き込まれた。


条件反射的に手と体で見られないように便せんを覆う。


「も、もう!いきなり見ないでよ〜!ビックリするじゃん」


しかも、いつの間にうちに来たの?


お風呂上がりなのか、スウェット姿というラフな格好。


だけど、万里は何を着てもよく似合う。


「なに?俺にラブレターでも書いてたわけ?」


「な、なに言ってんの。そんなわけないでしょ!お父さんにだよ」


「なーんだ。俺宛てじゃないのか」


肩を落としてシュンとする万里。


「手紙、欲しいの?」


「いや、別に」


「…………」


「でも、るりからの手紙は喜んで受け取る」


「欲しいってことでしょ?」


「いや、特には」


「じゃあいらないの?」


「そうとは言ってない」


「どっちなの!」


意味わかんない。


思わず突っ込み入れちゃったじゃん。


「ムリに書かなくていいってことだよ。書きたいなって思って書いてくれたら、喜んで受け取る」


「じゃあ、書きたくなったら書くね」


「おう」


要するに気持ちが込もってたらいいってことね。


お父さんへの手紙は、書きたくなって書いた。


言葉に表せない思いを伝えたくて、気持ちを全部ぶつけた。


でも、こんなの渡せないよね……。


昔のままでいてほしかったなんて、病気のお父さんを認めてない証拠だもん。


こんなの……渡せない。