ケータイ小説 野いちご

花京院社長と私のナイショな関係

もう大丈夫。
社長に会っても、もう普通でいられそう。


今日は金曜日で、社長がいないと秘書さんたちの仕事も落ち着くらしく、今日は早めに帰ると言ってた。
私は月曜の朝イチに入った会議室の準備が終われば終業。
17時前になって秘書室長から「悪いけど、急に会議が入ったからお願いするよ」と資料作りと設置を頼まれたのにはがっかりしたけど、仕方がないので残業している。
雪乃さんが手伝うとは言ってくれたんだけど、秘書さんたちはいつも残業しているからこんな時くらい早く帰ってください、と断った。
雪乃さんはいい人だ。綺麗だし、優しいし、いつもいい匂いがするし。あれで今は恋人はいないって言うんだからもったいない。


「よしっと」

モニターと資料配布OK。左利き用の人の分の資料もOK。
会議室の電気を消して終了。

文具の入った箱を持って秘書室に戻ると、私の机の前に意外な人が立っていた。


「星野くん?どうしたの?秘書室に用事?」


所在なさそうに立っていた星野くんは、私に気づくとほっとしたように笑った。


「まどかちゃん。よかった。バッグはあるし電気はついてるからまだ居るはずとは思ってたんだけど」

「もしかして私に用事?何?」

「うん。この前…落ち込んでたからどうしてるかと気になって」


先週、星野くんはやけ酒やけ食いに付き合ってくれた。心配してくれてたらしい。やっぱいい人だなあ。


「ありがとう。もう大丈夫だよ。この前は飲みに誘ってくれてありがとう。おかげで元気になったよ」

「そう?よ、よかった」


星野くんはなぜかそわそわとしている。いつもと違って落ち着きがないように見えた。


「星野くん?」

「ま、まどかちゃん…、あのっ」


いきなり両手を取られた。正面に立って真っ赤な顔。意を決したような目が私を真っ直ぐに見ていた。


「ぼ、僕と付き合って欲しい」

「…え」

「ずっと…好きだったんだ。でも勇気がなくて。そしたらこの前、失恋したって言ってたから」


ぎゅっと抱きしめられた。
星野くんは私とそんなに身長差がない。熱い息と声が私の頬に直に伝わる。
社長とは…違う感触。



「星野くん…」




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