おっさん!と縋る目をしたら「ワシは消えとるやさかい、仲ような」とにやりと笑ってどこかへ行った。

おっさん監視のもと、そういう行為をすることにならず良かった。って良くない良くないから!!



「俺はさっきシャワー浴びたから、どうぞ」


浴室はそこドアの向こうだからと、さっき社長が入ってきたドアとは別のところを指さした。


「……」


社長は本気なんだろうか。私と本気でエッチをする気なんだろうか。


「どうした?体がきついなら後にする?俺は気にしないけど。ああ、そうだ。一緒に入ろうか?」

「い、っしょ…っ!」


うっかり想像して、ごふぅと鼻血が出そうになった。

…社長、もしかして私をからかってる?だよね?そうよね!?


「ど、どっちもご辞退申し上げます!ていうかお風呂以前に根本的な事が気にならないんですか!?」

「なに?」



心配事があるなら聞くよ、と言ってベッドの端に腰を下ろす社長は、いつものように柔らかな雰囲気だけど何を考えているのか分からない。


「か、彼女は?お付き合いしてる方はいないんですか、社長」

「いない。体の関係がある女も…ここ1年近くない、な。前に話しただろ、女運が良くないんだ」


彼女と体の関係のある女は別カテゴリーなんですかと突っ込みたくなったけど、そこは無視した。ハイスペック男子ですからそれもアリなんでしょう。うん。



「わ、私の陰陽バランスが崩れたせいで社長の浄化ができないから困る、というのが理由なら病院に行って点滴でも打ってきます。プロテインとかすっぽんサプリも飲みます。そしたらこんなことしなくても」

「まどかは俺と寝るのが嫌?」


頬をそっと包まれて上を向かせられた。透き通るような茶色い瞳が私の心の奥を見透かそうとする。


「…なんで呼び捨てなんですか」

「今更?会社にいるときから名前で呼んでるけど」


くす、と笑われて、そういえば地縛霊の相手しているあたりから名前で呼ばれてたかも、と気づいた。


「じゃ、じゃあ欲求不満だから私とエッチしてもいいかって思ってます?」

「欲求不満は否定しないけどそれだけじゃないよ」

「…それだけじゃないなら何があるんですか?」

「それは…難しいな。上手く言葉にする自信がない」



唇が淡く重なる位置でそう囁かれて。

今は君を抱きたいから後でゆっくり答えるよ、そう言って口を塞がれた後はもう何も聞けなかった。