「まどか、お前倒れたんやで。覚えてるか」


おっさんが社長の肩から降りて心配そうに下から顔を覗き込んできた。


「あんま顔色ようないな。あいつそうとう怒っとったやさかい、ごっつう陽の気、持っていかれたろ」

「あーまあね。今日は2つ大物だったし。あ、社長すみません。あの後、私を運んでくれたんですよね。ここは…」

「俺の自宅。気にしないでゆっくりして」



微笑を浮かべた社長はサイドテーブルに置かれた花柄のカップに慣れた仕草でティーポットのお茶を注いだ。

リゾットを食べ終わると、はい、と差し出されたのは薫り高い紅茶。社長のこと、執事と呼びたい。セバスチャンとか呼びたい。



「そやな。うん。篤人、補給や。一発やっとけ」


おっさんは納得したように腕を組んで頷いている。

おおい、補給って…!キスはダメ!


「いや。大丈夫なんで。補給はなしの方向で!ほら、ご飯食べたらだいぶ元気になったし!」

「俺は構わないけど?補給、しようよ」


にこっと笑っちゃってますけど、えええ?何言ってんですか!


「いやいや、なに言っとんねん」


おっさんが手を伸ばそうとする社長と私の間に入って止めてくれた。そうそう、なに言っとんねんて話、


「やっとけ言うたろ。セックスや。がっつり挿れて注いでやらんと、まどかが可哀想や」

「ななななななに言ってんのおっさん!!」



可哀想だから社長にセックスしてもらえっておかしいでしょそんなそんなそんな…☆※〇×!!!


「こんままやと陰陽のバランスが崩れたままや。飯やキスくらいじゃ足りん。回復に時間がかかりすぎるわ。そうなると、負の気が強う奴に付け込まれるかもしれん。篤人に寄ってくる負の気も払えん。いいことなしや」


さも当然だと言わんばかりにおっさんは言うけど、でも!でもでもちょっとそれは無理…!



「分かった」

「社長!?」


何わかったんですか!?言われた意味分かってる!?


「でも避妊はするよ。結婚前の女性にそれはできない」

「あー まあしゃあないか。その分丁寧に愛撫せえよ」

「ああ」

「ちょ!あなた方、避妊とか愛撫とかナニ詳細話し合ってんの!?」

「大丈夫、心配しないで任せて。優しくするから…多分」



そう言って極上の笑みを浮かべた社長は美しく。

私は再び眩暈がして気を失いそうになった。