意識が浮上して、開いた目に入ってきたのは見知らぬ白い天井だった。

私、確か会議室で気を失って…。

あれからどうしたんだろ。会社の医務室…にしては天井が高い気がする。


のそ、と起き上がって見渡すと、肌触りの良い黒いシーツでベッドメイキングされたベッドの上にいた。

広々として物は少なく、右側にはカーテンの引かれた窓、左のサイドボードにはシンプルモダンなランプがあって、その下にしおりの挟まった英語の本が置いてあった。

ベッドは大きさからいってキングかクイーンかってサイズだけど、狭さを全く感じない。

ベッドの足元から数メートル先には黒い格子の入ったガラスの壁があって、向こう側にはインテリア雑誌に載っているような黒皮のパーソナルチェアとオットマン。壁一面は本棚になっていた。

なんだここ。モデルルームみたい。



体はだいぶ体温は戻ったみたいだけど、まだ力が入らなくてインフルエンザに罹った後みたいだった。

ぼーっとして頭が回らない。

しばらくぼけっとしていると、ガラス壁の向こう側にあるドアが開いた。


「目が覚めた?具合はどう?」

「社長…」


社長が手に持ったトレーの上には陶器のお皿が乗っていてほかほかと湯気が立っている。


「リゾット作ったんだけど食べられそう?」

「…社長、料理できるんですね」


こういう時は雑炊かおかゆが定番だけどリゾットときた。お洒落。しかもカボチャのリゾット。ちゃんとパセリまで乗っている。

お礼といただきますと言って一口食べると、カボチャの甘さにコクのあるチーズが合わさってめちゃくちゃ美味しかった。

自分でたまに作るなんちゃってリゾットじゃなくて、お店で食べる本格的なやつの味。…負けた。

「どうした?口に合わない?」

「いえ、めちゃくちゃ美味しいです。社長って何でもできるんですね」


自分の女子力の低さにがっかりしつつも、美味しいからぱくぱくスプーンが進む。