ケータイ小説 野いちご

花京院社長と私のナイショな関係

案の定、秘書課にもどってすぐに、室長から「悪いけど、この資料を第3会議室に持っていって。社長がいるから」とお遣いを頼まれた。

とんぼ返りでさっきのフロアに行き会議室に入ると、こちら向きに座っているおじさんの背後の黒いやつと、目が合った。

思わず後ろに後ずさってドアにぶつかりガタンと大きな音を立ててしまった。
最近この手のショックには慣れたと思ったけど、やっぱり慣れてないね。コワイ!


でもここは会社。背後にやばいもの背負ってるけど、こちらは取引先か何かのお客様。今更ながらに「失礼します」と頭を下げて社長に資料を渡した。


「座って」と社長に言われて、1つ席を離して座る。
お客様の斜め前。
でも黒い奴はこっちに顔を向けていた。
…そう。奴には顔がある。
じいっと私を見た後に、また社長に向き直った。ココココワイ…!
おっさんに「これ何」と目で訴えると「地縛霊」という答えが返ってきた。

「じ…!」


人の産んだものじゃな――――――――――い!

天然モノの霊だよ。地縛霊…!
幽霊の類よね?なんでそんなもの背負ってんのこの人!
どうりでぞわぞわ寒気がするはずだわ。本物だよこれ。どうすんの。
私の管轄外だよ。素人同然の霊能者には無理だよ。
お、お坊さんとか神主さんとかユタとかイタコとか、その道の専門家を呼んだほうが…!

おっさんに目で訴えると、肘をまげて力こぶを作り「力の見せ所やろ」とかぽんぽん叩いて気楽そうなこと言ってるけど見せる力とかないから!

社長は手渡した資料をぺらぺらと捲っている。たまにタブレットも弄って何かの資料を見ているようだけど。


「渡社長。急激に御社の業績が悪化していることは理解しました。我が社が無名だった頃からのお得意様であることも承知しています。なので支払い期限を精一杯延ばして待ちました。我が社がこれ以上譲歩することはできません」

「そこを頼んでいるんだ!篤人くん。恩着せがましいようだが、EXEXの成功は我が社も大いに貢献しているはずだ」

頼んでいる割には偉そうな渡社長が必死の形相で身を乗り出すと、地縛霊も前のめりになった。
社長は心持ちひきつった顔で机から身を離している。うん、社長も怖いんだねそれ。

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