『木の匂い?するかぁ?』


クンクンと自分の手の匂いを嗅ぐお父さんの姿が、なんだか子どもみたいで笑っちゃう。


『するよー、するする!るり、この匂い大好きだもん!お父さんがお家に帰ってきたら、フワッと匂うの』


お父さんの手に鼻を近づけてクンクンした。


やっぱり、いい匂い。


木の匂いは、お父さんの匂いだ。


『嬉しいこと言ってくれるな、るりは』


照れくさそうに頬を掻くお父さん。


小さなあたしの手ではお父さんの手を握れないから、親指をギュッと掴んだ。


するといつものように、お父さんの手がフワッとあたしの手を包んでくれる。


大好きなお父さんの温かい大きな手。


お父さんと手を繋ぐと、守られてるみたいで安心する。


『お父さん』


『なんだ、るり』


『るり、お父さんみたいな人と結婚するね』


『えっ……お前はまだ7歳だぞ?いや、何歳でもだ!結婚は絶対に認めないっ!るりはずっと家にいればいいんだ』


『えー、ずっと?』


『るりはどこにも行かなくていい』


『わかった!じゃあ、ずっとお父さんとお母さんといる』


『そうしろ。それが一番いい。るりはどこにもやらないからな』


2人で笑い合った帰り道。


大好きだったお父さん。


お父さんは力持ちで、強くて、カッコよくて。


ヒーローみたいな存在だった。



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