そのとき、視線に気がついた。

反射的に顔をあげると、青磁と目が合った。

硝子玉の瞳。


なぜか視線が逸らせなくて、微動だにできずにいると、青磁がおもむろに動いた。

細長い指で自分の前に置かれたカードの一枚を手に取り、私に向けて見せる。

それは私が書いたカードだった。


「……なに?」


微笑んでそう返すと、青磁が眉をひそめる。


「適当なことばっか書きやがって。お前、俺の絵なんか見たことないだろ。それに、俺のこと嫌いだろ。なのに誰にでも好かれるとか、ふざけたこと書いてんなよ」


マスクの中の顔が歪むのを感じた。

は? と言い返してしまいそうになる。


適当なこと? ふざけたこと?

何言ってんのよ。

こっちが気を遣って、いいこと書いてやったってのに、なんでそんなに苛々した顔してるのよ。


私はマスクを上げて感情の高ぶりを抑え、俯く。

そこにはさっきのカードがあって、また心臓が凍ったような気がした。


吐き気がする。

早く、授業、終われ。


それから一度も青磁のほうは見ないようにして、私は何とかその時間を乗りきった。


家に帰り着いた頃には疲れきっていて、食事の片付けと玲奈の世話もそこそこに、九時過ぎには自分の部屋に引きこもった。

お母さんが不満そうだったので、何かを言われる前に「ちょっと疲れてるから早く寝るね」と言っておいたけれど、お母さんも疲れてるのに申し訳ない、という思いもあって、結局はなかなか寝付けなかった。