お母さんは満足そうにうなずいてから、床に置いていた旅行鞄を手に持ちはにかんで言った。



「行ってきます!!」


「「行ってらっしゃい」」



私と湊君は声をそろえてそう言って、ドアの向こうへと去っていくお母さんの姿を見送った。



「……本当、いい人だよな優花さん」



「私の自慢のお母さんだもん。当たり前だよ」



そう言ってどや顔。

すると湊君は小さく笑って私の肩を抱いた。



「自慢の人の娘であるお前も十分いいやつだよ」


「……へへっ。ありがとう」


「好きだよ。優花さんを慕う気持ちよりも実花を好きって思う気持ちの方が大きいくらい」



そう言って湊君は私にキスをひとつ落とした。