木の影でしばらく息を潜めていると、今度はアーラが現れた。



「あっ……大悪魔様が来たよ」

「うん、アーラだね。って、声を掛けた方がいいのかなぁ?」

「でも、何があっても声を出すなって言われたんでしょ?」



あぁ……そうだっけ。

『何か起こっても声を出したりするなよ。姿も見せるな。影に隠れて見とけよ』

って言われたんだった。



じゃあ声を掛けないようにしようという決断に至ったけれど、

どういうことかアーラの方から声を掛けてきた。



って、なんで即効バレてんの?



「よぉ。逃げ出さずにちゃんと来たんだな」

「そりゃあ……大悪魔様のお申し付けとあれば!」



次咲くん……。

だからアーラを崇拝し過ぎだってば。

彼にとってのアーラは、悪魔じゃなくて神のような存在なんだろうなぁ。



「そこから動かずに、よーく見てろよ」

アーラは私と次咲くんの間にしゃがみ込むと、川辺の方向に指をさした。



すると、そこに釣り竿を手にした佐々原くんがやって来た。