ケータイ小説 野いちご

不透明ヒーロー





「嫌だよ」

こんなにもはっきりと告げられると思わなくて、心臓が大きく跳ねた。


振り返ると真剣な表情の千尋が、私のことを見つめている。



「ワガママかもしれないけど、俺は……文香を知らないやつに奪われたくない」


し……心臓が、壊れそう。


バクバクと大きな音を立てて、私の頬を紅潮させていく。

肌寒いって感じていたのに、急に暑くなってくる。




「っ会わないよ」

そう答えるのが精一杯だった。

告白して振られていなかったら、勘違いするところだったよ。



「……うん」

それ以上はお互いに何も話さずに、私の家の前まで歩いた。


千尋はずるい。

振ったのに、他の人に奪われたくないだなんて普通言わないよ。


でも奪われたくないって言ってもらえたことが嬉しくて、何も言えなかった私もずるいのかもしれない。






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