ケータイ小説 野いちご

好きなんだけど!

照れ笑いをするなっちゃんは、かわいい。

そうか、高校最後の夏ともなると、こういうことが起こるのか。



「あれえっ?」



けれど、6番と呼び出されてスタート地点である、誰だかいまだにわからない胸像のある場所に行ってみれば、そこにいたのはなぜか靖人だった。

Tシャツにジーンズという格好の靖人が、素っ頓狂な声を上げた私に目を丸くする。



「なんだ?」

「靖人、8番じゃなかったの?」

「そうだったんだけど、番場が交換してくれって言うから」

「それ、どのタイミング?」

「ついさっき」



ということは…。



「言っとくけど、番場の狙いは有川な。お前じゃなくて」

「わざわざ言われなくてもわかってるよ」



各人の思惑が交錯して、とんだミステリーになってしまった。

これじゃなっちゃんも、スタートしてみてびっくりだ。

あれ?



「靖人、よく私がなっちゃんと番号交換したの、知ってたね」

「だって、もう表が出回ってたぜ。それが逐一更新されてくの。もうくじの意味ねえじゃんって」

「わかる。女子も同じ状態だった」



そこで二度目のあれ? が来る。



「てことは、靖人は、なっちゃん…」

「それ言わないどいて」



とりあえず順路を進もうと歩きだしたところで、靖人が私の発言を遮るように、急いで言った。

つまり靖人は、なっちゃんが靖人目当てで私と入れ替わったのを知っていながら、自分の番号を番場くんに渡したってことだ。

その経緯が耳に入ったら、なっちゃんはショックだろう。



「罪な男…」

「だって仕方ないだろ、なんか言われても俺、応えらんねーもん」

「なっちゃん、かわいいじゃん、野球大好きだし」

「そういう問題じゃない」



ふうん…と納得しかけた直後、私は金切り声を上げた。



「きゃあー!!」



靖人に飛びついたら、向こうが吹っ飛んで木にぶつかった。

< 116/ 213 >