忙しなく私と健吾くんに交互に向けられていた視線が、やがて私たちの、繋いだ手の上で止まる。

その目が、愕然と見開かれていった。

私は思わず、健吾くんの後ろに隠れたくなって、でも耐えた。

そんなのは、卑怯で、失礼だと思ったからだ。



「…え、嘘でしょ?」

「青井、あのさ、お前だから言うけど」



あっ…健吾くん!

思わず腕にしがみついて止めた私を、彼が不思議そうに見る。

訴えたいことが声にならなかった。


美菜さんは、ダメだよ。

だって、だって…。

ああ、でももう今さらだよね…。


美菜さんが、信じられないものを見るように、困惑に顔を歪めて、慎重に訊いてきた。



「…つきあってるの? 本気で?」



嘘であってほしい、と言っているような声だった。

でもその理由は、健吾くんにはきっと正しく伝わらなかった。

健吾くんが、私の手をそっと握り直し、それからはっきりと言った。



「うん」



少し照れのまざった、でも真剣な声。

美菜さんは、言葉をなくしたように身体を強張らせて、私たちふたりを凝視している。

頭上で弾ける花火が、その顔を色とりどりに染め変える。



「あのさ、誤解してほしくないんだけど…」

「私がいくに未練たらたらなのを、どう思いながら見てたの?」



震える声が、健吾くんの言葉を遮った。

まっすぐ私に向けられた、傷ついた瞳。


なにも言えなかった。