「ずっと、あなたを見ていたわ・・・ううん、正確には、ずっと、あなたを探していた」


 婦人は、紅茶を入れながら言った。


「わたしを探してた・・・?」
「そう。あなたが生まれた時から、ずっとね」
「どういう・・・事ですか?」
「あなたのご両親・・・凄く優しくて、そして、強い方だったわね」


 婦人はいきなり、こんなことを言い出す。
 交通事故で亡くなった、美樹の両親。
 ずっと、美樹は二人に愛されて育ってきた。
 父親も母親も大好きだった。
 でもどうして、今ここで、婦人はそんな話を持ち出すのか。


「あなたのお母様はね、私たちと同じなの」


 カチャン、と、ティーカップをソーサーに置きながら、 婦人は、淡々とした口調で言った。
 だが、美樹は、その言葉の意味を理解するまでに、かなりの時間がかかった。
 何度も頭の中で、婦人の言葉を反芻する。
 お母さんが、中川婦人と同じ。
 と、いうことは。