夕食が済んだ頃から、美樹は何か胸のあたりがちくちくと痛むような感覚に襲われていた。
 だんだん呼吸も苦しくなってきて、思わず胸に手を当てて、大きく息を吸ってみたりする。
 美樹のそんな異変の意味を察知しているかのように、彩も悠も諒も、だんだん口数が少なくなっている。
 昼間はいい天気だったのに、今は風が強く、庭に立っている木がざわざわと葉っぱを揺らす。


「ね、ねぇ・・・何かなこの感覚・・・」


 不安になった美樹は、彩に聞いた。


「ん? あぁ、いつもの“お客さん”だよ」


 その表情は硬い。
 ――・・・しばらくの沈黙。
 そして。
 おもむろに、彩が家の外に出た。悠と諒も、ゆっくりと立ち上がる。


「みんな?」


 美樹も立ち上がったが、婦人に止められた。


「あなたは、ここにいて?」


 変わらず優しい口調だが、否と言わせないような重圧感があった。
 仕方なく美樹は座り、外を見る。
 三人の姿はもう、見えなくなっていた。
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