彩はポリポリと後ろ頭を掻いて。


「うん、実はさ、ちょっと酔っ払って転んだんだ。また来てくれたんだね、ありがとな」


 そう言って、彩は絆創膏だらけの手で女の子の頭を撫でている。
 女の子たちは笑いながら、あまり心配かけちゃダメだよ、なんて彩の事をたしなめていた。
 悠や諒とは違う意味の彩のファンなのだろうか、女の子達は圧倒されるようなテンションで彩と話し込んでいた。
 それでも受け答えしながら、彩は少し、美樹の方を気にしている。


「・・・おい、悠」


 トレイを持ってすれ違おうとした悠のシャツを引っ張って、彩が店の奥に連れて行く。


「美樹に何か言ったのか?」


 普段何も考えていないようでも、美樹のことになると彩はやたらと鋭い。


「まぁ、本当のことを話したかな。いいタイミングだと思ったし」


 正直に白状した悠に、彩はふ~ん、と相槌を打つ。
 もともと、悠達のやることには、出来る限り口を出さないようにしている。