「悠くん、諒くん。わたし達も、そろそろお昼にしようか」


 お客さんが少なくなるこの時間帯に、毎日美樹特製の『スペシャル裏メニュー』を食べるのが、日課になっていた。


「今日は、特製クリームパスタよ。あら?」


 美樹は、ふと店の外を見る。


「彩は?」


 気が付いたら、彩がいなくなっていた。


「どこに行ったのかしら?」


 首をかしげる美樹に、悠は苦笑する。


「彩はね、『たまには一人になりたい病』なんだよ」
「・・・何それ」
「ま、放っておいて大丈夫ってこと」


 そう言って、悠はパスタを食べ始めた。
 だんだん空の雲行きが怪しくなってきている。
 この雰囲気じゃ、一雨降るかも知れない。


「でも心配よね・・・いきなりいなくなるなんて」
「心配?」


 窓の外を見ながら言う美樹に、諒が聞き返す。


「当たり前でしょ。友達なんだから」
「これ食ったら、俺が呼んでくる」


 諒が言った。


「うん、お願い」


 もう一度窓の外を見てから、美樹も食事を始める。
 諒が店を出ていって、美樹と悠はかき氷スペースの撤収を始めた。