「なぁんであたしがゴリラかなぁ」
「あははは・・・さ、夕食、作るね」


 思わず笑って誤魔化して、美樹は店の奥に入っていく。
 悠と諒も立ち上がる。


「あそこまで言って、良かったのか?」


 すれ違いざま、諒が言った。
 彩は頷く。


「いいんだよ。隠してたって、いずれ分かる事なんだから 」


 そう言う彩の表情は、どこか辛そうに見えた。


「・・・あいつには、辛い思い、させたくはないなぁ・・・」
「お前と同じように・・・か?」


 諒の問いかけには答えずに、彩は押し黙る。


「彩。俺たちがいる。・・・だろ?」


 悠が、彩の肩に手を置いた。


「そうだね。もう、一人じゃない」
「あぁ」


 悠はにっこりと笑って、彩の頭をぽんぽん、と撫でる。
 そして家の中に入っていった。