「復活するとしたら、いつぐらい…?」

「丸一日くらいって書いてあるけど、お前、バックアップは?」

「とってない…」

「マジか…」



どうしよう、泣けてきた。

連絡先なんて、もともとたいした数入れていなかったし、靖人も兄も、家で会える。


でも、健吾くんには、これがないと連絡できない。

写真だって入っていた。

いつも嫌がるから、こそっと部屋で撮った、大事な何枚か。


どうしよう。

私、健吾くんになにを言うかも、まだ考えられていないのに。

伝える手段のほうが先になくなっちゃったよ。



「郁実…どした?」



私の様子に、携帯がダメになった以上のなにかがあると察したんだろう、隣に座った靖人が、労わるように頭を叩いてくれる。

涙がぼろっとこぼれて、私は携帯のパーツを投げ出して、テーブルに突っ伏して泣いた。


健吾くん、私、この先どうしたらいいか、全然わからない。

だって全部正直に言ったの。

それでダメなら、私は自分に嘘をつかない限り、健吾くんとはこの先、もうないってことだよね。


怒った彼が怖くて、これまでどれだけ甘やかされてきたか知った。

わがままも強がりも全部、はいはいって聞いてくれていた。

それがどんなに贅沢なことだったか、ようやく気がついた。


健吾くんに過去を変えてほしいわけじゃなくて、今を変えてほしいわけでもなくて、ただ、わかってほしかっただけなの。

私、苦しいんだよって、知っていてほしかっただけなの。

うまく伝えられなかったかもしれないけれど、それだけなの。


それだけだから、どうか許して。

一度聞いてくれたら、二度としつこく言わないから。



「郁実…」



嗚咽をもらしはじめた私を、靖人が心配そうに、背中をなでて慰めてくれた。


健吾くん。

私、健吾くんのこと好きなんだよ。


それだけなんだよ。